シリパ岬

余市漁港はこれまでにも三か所ありました。(湯内地区、島泊地区、出足平地区)
烏帽子峠から内陸に入り大きな集落地に出ると突き当りが余市港になります。余市で最も大きな漁港になります。
この余市港の北には標高 295.8m の尻場山が聳えており「シリパ岬」があります。この山の海側はまさに「断崖絶壁」と言うべき地形で道路はありません。余市のシンボル的な存在です。

シリパとはアイヌ語で、sir=山、pa=頭の意味で、海に突き出している山の頭、すなわち岬を表し、今から約630万年前に粘性の高いマグマが海底に噴出して、水中で昭和新山のような溶岩ドームをつくったものと考えられています。

絶壁の下には洞窟があるという言い伝えがあり、伝説が残されています。

『妻を亡くして寂しく暮らす若者が、ある日、漁の帰りにシリパ岬の断崖の下で死んだはずの妻が海苔を採る姿を見つけ、船で近づくと妻は洞穴の中に逃げ込んだ。男が妻恋しさのあまり夢中で洞窟に入るとそこは死者ばかりが暮らす部落になっていた。
その中のある老人が若者に「ここはまだ、お前の来るところではない。早く帰りなさい」と強く言い、若者は追い返されてしまう。しかし若者はそれ以来腑抜けのようになり仕事も手につかず、やがて死んでしまった。
この洞穴は、コタンからは昔より恐れられていたが、それ以来「オマンルパロ」(あの世への入り口)と呼ばれ、誰も近寄らなくなったという』